真冬の北海道で大災害が発生したら、被災者は寒さに耐えられるのか?

      2019/06/20

札幌人は冬に傘をさす?

私は子どもの頃北見市に住んでいました。年に数回、氷点下30度を切ることがありました。マイナス30度で、息を吸ったり瞬きをすると、鼻毛やまつげが粘着的なことになり、雪の上を歩くとグキュグキュっと音がなります。屋外ではいくら厚着をしようとも首、手、足、頭がガンガンに痛くなってきます。

ところが札幌は違います。私は中学の時に札幌に引っ越したのですが、札幌人が冬に、傘をさす様子に驚きました。北見の人はさしませんでした。傘は必要なかったのです。たぶん札幌人にとって、雪は肩や頭に付くと溶けて濡れるからでしょう。同じ北海道でも寒さの程度と対処法が全く違うわけです。帯広に出張に行ったとき、車の中に置いておいたノートが凍ってバキバキになっていたことがありました。紙って凍るの?と驚きましたが。。。帯広も特に十勝晴れの日などは芯まで冷える寒さがあります。

体育館は寒さをしのげる場所か・・・

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もし、こうしたマイナス20度を下回ることがある地域で、冬に、大災害が起きてしまうと、停電の発生で大半の暖房が使えなくなり、寒さの問題が生死に関わる問題になります。特に避難所になることが多い学校の体育館が問題です。体育館は断熱性能がほとんど期待できない空間であり、バレーボールができるように天井の高さは11メートル以上あります。天井が高いと、いくら暖房をしても、暖まるのは上のほうばかりです。避難者が雪の中、厳寒期の中を必死で逃げ込んできた体育館が凍えるほどの寒さだったらどうなるでしょう。体育館は屋内とはいえ、人が暮らす、寒さをしのぐようにはできていません。避難者の多くは毛布や寝袋を持ってきません。避難所には何か温かい空間や食べ物がある、毛布もあるだろうと思っているからです。

阪神・淡路大震災や東日本大震災のような大災害が、もし冬場の北海道で発生したら・・・

北海道には陸別とか名寄とか、寒さで有名な地域がたくさんあります。もちろんそういう地域も大変です。しかしここで注意しなければならないのは人口規模です。北見、帯広、旭川という人口10万人以上の中核都市で、なおかつ厳冬期にマイナス20度を下回ることがある地域がヤバいのです。もちろん2000人、3000人といった規模の市町村だって、災害時に避難者をどう守るかは重大です。しかしその場合、避難先が見つからない人は人口の半分だとしても1000人、1500人規模です。これが人口が11万人の北見、16万人の帯広、34万人の旭川では、もし市内全域に避難勧告が出るような事態になると、人口の1割程度の、食料や毛布などの備蓄しか用意されていないということは、10万人単位の避難所難民とも言える人が発生しかねないということを意味します。そんなにたくさんの避難者を受け止める避難所、毛布、非常食、暖房などは全然揃っていないのです。

しかもこの3都市はあまり大きな災害を近年経験しておらず、もし冬に停電を伴う大災害が起きたときに、どう対処すべきか、市民それぞれが家族で話し合い、どうやって寒さや空腹をしのぐか、どこに避難するか、といった方法を決めていない人が多いのです。東日本大震災は3/11ですから、震災直後は寒さに苦しんだ人もたくさんいたと聞きます。とはいえマイナス10度とかマイナス20度では無かったでしょう。北海道の中核都市で、冬に大災害が起きた場合、避難所や自宅での低体温症など、寒さが原因となる重大な事態が起こりうるわけです。これは他県とは一段階リスクの程度が違います。

帯広市の冬季避難所運営訓練

帯広市民は、大地震の経験はありますが、津波の経験はありません。水害の経験は2016年にデカいのを経験しましたので防災意識も高まったと思います。帯広市は平成23年2月に、道内の市町村では初めて、宿泊を伴う冬期避難所運営訓練を実施しました。発電機を電源にジェットヒーターで室内を暖め、備蓄の毛布や寝袋、カレーライスの炊きだしなども行いました。東日本大震災の3週間前というタイミングもあり大きな注目を集めました。訓練で分かったのはジェットヒーターで室内の二酸化炭素濃度が急上昇することとその対策です。全避難所へのストーブの配備や、避難所運営マニュアルの作成、市職員の避難所運営訓練なども進めています。

北見市の避難所運営の実証演習

北見市は日本赤十字北海道看護大学の学生ボランティアサークル「災害beatS研究会」が大学の体育館を使った避難所運営の実証演習を毎年行っています。初年度の22年は、9月に行って、夜間の外気温は7度とまだまだ冬ではない時期だったのに、暖房なしでは大学生たちは底冷えする床の冷たさに耐えられず寝ることができないまま夜を明かしたそうです。
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今ではバレーボールのネットなどを利用し、大きなプチプチ(ビニールハウスの保温などに使う気泡緩衝材)で天井の高さを低くというか体育館の容積を減らし、その中に向かってジェットヒーターの熱を送り込む方法で暖かさを確保しつつ、1体育館で何とか200人を収容できる体制までを構築できるようになりました。
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屯田兵を見習う?

災害は予期せぬ時に、場所に、突然襲ってきます。災害時には家族を失う人も、空腹や怪我に苦しむ人もいるでしょう。そんな中で、寒さの問題も襲いかかってくるのです。これをどうしのぐのか。これは北海道では特に真剣に考えないとならない問題だと思います。

ちなみに、開拓時代の北海道でもこの冬の寒さ問題は当然深刻だったと思います。災害もあったでしょう。しかも電気ガス水道もない時代です。どうやって乗り切ったのでしょうか。以前取材に伺った足寄町の開拓農家さんの家では、薪ストーブと、お風呂用の薪ボイラーがありました。停電があっても暖房は薪でOK、それどころか煮炊きも風呂も入れるのです。数日なら何の問題もなく安全に過ごせるわけです。
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現代人は文明・科学の力で自然を克服したかのように過ごしていますが、いざ停電などに見舞われると無防備さが露呈してしまいます。ちなみに札幌市民も冬の大災害をあまり経験していません。しかし豪雪、停電、水害、暴風、など災害は札幌にも襲いかかるリスクがあります。190万人もの人口を抱える札幌市で、冬に停電が起こったら。膨大な被災者の寒さ対策、水、食料、トイレ・・・もろもろの問題をどうやってクリアすれば良いのでしょうか。

この件で得られる教訓

1 停電になっても暖房ができる薪ストーブやポータブルストーブ、毛布、温かい飲み物を用意できるガスコンロを用意すべし。

2 避難所の寒さは床のマット、発電機とストーブの備え、毛布や照明など様々な備えなしには乗り越えられない。

3 いくら避難所の備えを充実させても住民全員を守るには足りない。市民が自力で寒さ、空腹などをしのげるよう、しっかり自助を高めるべし。

4 もちろん避難所の課題は寒さだけではない。食、トイレ、公平な運営、高齢者や乳幼児対策など。一度は宿泊を伴う避難所運営訓練をすべし。

北見

 

2018年9月6日3時の「北海道胆振東部地震」の数時間後から、毎日この投稿の閲覧が増えています。北海道民の方が、今回の事を踏まえ、この記事に辿り着いてくれているのかと思います。

私の遭遇した状況を少し書き残しておきます。2018年9月6日の「北海道胆振東部地震」で札幌市北区の状況を振り返る

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