「食育」のお手本小浜市。給食の「地産地消」に挑戦する東神楽町。

      2016/06/19

今の子育て世代で、お母さんから魚のさばき方や行事食、家庭料理の方法をしっかり習って、子どもにも食べさせている家庭はどれほどあるでしょうか。

インスタント・レトルトの普及もあります。共働き家族が増え、家庭の料理に費やせる時間は前の世代から急速に短縮されています。親から子へ、子から孫へ食文化が伝承されるというより、調理・家事にかける時間を極力減らしその浮いた時間を仕事・趣味に費やすというライフスタイル・価値観の伝承の方がより強く伝わっているのが現代ではないでしょうか。

しかも、各家庭の食事情は家族の構成員しかほとんどわからないいわばブラックボックスです。私の家では1日3回、一汁二菜の食事を食べているからといって、お隣の家庭では朝は菓子パン1個、昼はワンコインで各自、夜はそれぞれ食べたいものを買ってくる方式かも知れません。現実、実態が計り知れないのが家庭の食事ではないでしょうか。今回は「食育」でこうした問題に挑戦する市町村の事例を元に、今、何ができうるのか考えたいと思います。

●4~6歳の子どもが一汁二菜を自分で作る! ~1例目 福井県小浜市

私が一番衝撃を受けたのは平成24年に取材に伺った福井県小浜市の取組です。小浜市在住の4歳から6歳の子どもは全員一度、小浜市食のまちづくり課が主催する「キッズキッチン」を体験します。

幼稚園の先生に食文化館につれてこられた子どもたちは、先生に「味噌汁の出汁は何でとるのかな?」と聞かれ「昆布!」と答えます。手のひらに豆腐を乗せられ、包丁で切ります。1人1尾のアジを配られうろこを取り3枚におろすところまで各自が大人のサポート無しで行います。保護者など大人はガラス越しに見つめるだけです。子どもたちは包丁を自ら持って、魚や豆腐を切り、ガスを使って味噌汁を作ります。

小浜豆腐

●親の手を借りないから自信が付く。親も子どもの力を知る

ここで重要なのは、まず親の手を借りていないことです。親が子どもの背後から手をあやつる、いわゆ る「2人羽織」では子どもたちは自分で料理したとは感じません。全部4歳から6歳までの子が自分でやり遂げるのです。小浜市の狙いは、子どもが料理上手になることではありません。自分でできる!自分で料理を作って、自分とそしてお母さんに食べさせてあげる、そういう体験をさせてあげることです。普段は全てお母さんがやっていることなのです。これは子どもに「自分もやればできる!」という達成感、自信を植え付けます。

家に帰ったあと、お父さんに「私はお母さんみたいに上手に料理ができるんだよ」と目をきらきらさせて話す子どももいます。これが子どもの成長、自立、向上心の養成にどれだけ効くか!料理が終わったあと、子どもたちが作った料理を親子で食べます。お母さん達は驚いて感激するそうです。うちの子が1人でここまで!!子どもの秘めたる力に親が気づくのです。これはお母さんにとってもスゴイ体験なのです。

●食育に無関心な家庭の子も体験できる「義務食育」

次に重要なのは、小浜市在住の子ども達にもれなく体験させることです。一般的な食育は、「食の大切さ」を強く意識する親御さんのお子さんにだけ行われています。問題は、親が子どもの食、食育にほとんど関心を寄せていない家庭はどうなるのか、ということです。小浜市は幼稚園と連携し、親御さんの意識に関係無く、幼稚園の先生が子どもたちにキッズキッチンを体験させています。

つまり、食育に無関心な家庭の子であっても参加するのです。これを小浜市は「義務食育」と呼んでいます。これが有志で行う市民活動、一部の意識高いお母様たちで行う食育活動と決定的に違う点です。

●魚のもつ魅力を存分に活かす

料理教室といえば大抵農産物を使ったモノが多くなります。魚料理は包丁を使う、時化などで食材がその日揃わないかもしれない、そもそも講師が包丁の使い方を教えられない、内臓や鱗などもろもろやっかい、子どもが嫌い、といった事情があるかもしれません。ですが魚を使った食育にはスゴイ力があります。野菜とはちょっと違う点。それは命が生々しく感じられる点です。なんせ腹を切り、内臓を取り出し、血が出る。卵も出てくるかもしれない。命を頂くという現実に子ども達の心拍数は急上昇します。命の有り難さにも気づきます。小浜キッズ①

●地元の水産業を救う

県漁連小浜支所の支所長は「魚の下ろし方を知らないからマグロのサクや、焼けばいい魚などしか売れない。地場の魚の美味しさも調理法も知らない消費者が増えてしまうと地域の水産業は消費低迷で魚価が下がり、仕事が続けられなくなる」と言います。ところが小浜市のキッズキッチンが平成15年に始まって、市内での地魚の消費が少しずつ盛り返してきているんだそうです。「魚の外見、匂いで鮮度がわかる子どももいる。魚の美味しさを子どもが知っていれば食卓に魚が並ぶことも増える。食育は地元の一次産業も救う」と話してくれました。

●食育が観光資源にまで

実はこの小浜市のキッズキッチン。市外の親御さんからも熱い関心が寄せられています。「小浜市民じゃないけどうちの子にもぜひ体験させたい」と旅費と参加費を負担して参加する親子がたくさんいるのです。

また地元の食生活改善推進員の皆さんは50人で「グループ・マーメイド」という会を結成しました。公設民営レストラン「濱の四季」をオープンさせたのです。地場の農水産物を活かし、塩や酢に至るまで地場の良いものを厳選、手間のかかる料理を惜しまず提供することで大繁盛店になりました。この店を目当てに小浜市に行く人がいるのです。食改さん、食推さんは全国にいますがこれほど打って出る食改さんも珍しいかと。

古民家を改装して地域の食材を使ったお弁当屋さんを開業した女性もいます。お母さん、お婆ちゃんたちは子育てもあるので急に休むこともありますが、田舎の集落で運営しているのでバスに乗ってお化粧して働きに行く必要もなく、普段着で働けると好評です。お寺の檀家さんたちの勉強会とか地域のイベントとか、独居高齢者への安否確認を兼ねた宅配などに利用され、地元の魚や山菜の入ったお弁当は大好評です。

もっと詳しく知りたい方は

をオススメします。私もこの本に感化されて取材に伺ったので

●2例目 給食の地産地消に取り組む東神楽町

東神楽町はもともと農村地帯。都市近郊にあり宅地造成を機に都市部から子育て世代がたくさん流入してきました。これまで、学校には我が家で作った米や野菜を子どもにも食べさせたいという親御さんも多く、給食は採用されていませんでした。

ところが都市部からの流入により、共働きの夫婦も多くなり、農業ではない家庭も増えた結果、給食の要望が増えて平成5年に給食が始まりました。東神楽町は学校給食導入を機に食育を進めようと、児童・生徒が全員集まって食事ができるランチルームを小中学校に設置。各校に調理室を設ける自校調理方式も採用しました。

1年生から6年生がシャッフルされ1つのテーブルに座ります。上級生は下級生に食事の仕方の模範を示しつつ、下級生が好き嫌いなく食べた時は褒めたりします。偏食・アレルギー・小食の児童のそばには先生が配置されています。調理員さんが目の前で作ってくれた給食を食べることで感謝の気持ちも生まれます。

●学校農園で食と農のつながりを学べます

東神楽小学校のランチルームの大きな窓からは一面に広がる学校農園が見えます。ジャガイモやトウモロコシを先生や児童、そして近所のシニア世代グループ、そして農業者が栽培をサポートしながら野菜作りを行っています。食材がどうやってできるのか。学ぶ機会なのです。

地域の農業者にとって、児童は明日の農業の担い手です。食と農がしっかり結び付いた子ども達は、農業を基幹産業とする東神楽町に誇りを感じるかもしれません。Uターンするかもしれません。そんな希望を持ちながら地元の方々は学校農園に協力しています。

●給食に地場産品を使う難しさ

東神楽町にはニンジンやタマネギ、養鶏、果物の農家がほとんどいません。豆腐やさんなど加工食品会社も少なく、給食で地場産材活用はもっぱら町がコストを負担していた米だけでした。

これはなんとかしないとならないと、町は農協と相談し、ダイコン、アスパラガス、トウモロコシ、水耕栽培のミツバや豆苗を農業者と学校が力を合わせて給食に導入する体制を作りました。

さらに旭川大学と連携し、野菜の乾燥保存、スープやドレッシング活動の策も練っています。小中学生に夢の給食レシピを募集し、138点が応募。調理員さんたちも2時間で調理できる策を練って4つのレシピが給食に登場しました。学校給食の地場産品採用率は8・4%から30%に増えたそうです。

小規模な小学校などでは調理員さんの頑張りで地場食材活動が進むことがあります。でも東神楽町には200人、450人の小学校もあります。地域のこだわり野菜を450人分、朝9時から11時までに調理を終えるのは難しいのです。調理法の研究、食材のバリエーション拡大、安定供給、そして食品加工会社の協力なくしてはなかなか難しい取組で成果をあげています。

レシピ

 

●自分でも食育に関わってみたくて・・・

ちなみに私。こうした食と一次産業に関わる取組をたくさん取材した中で、自分も取材する側だけでなく、プレイヤーにもなりたいという欲求が強くなり

http://rkgc.jp/ るるるキッチンガーデンくらぶという市民グループの裏方になりました。

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これはこれでなかなか大変ですが、貴重な経験になっています。るるる♪キッチンガーデンくらぶをどうやって、どのように立ち上げたか、経験談はこちらです
http://sk2015.net/?p=1285

栗原
北海道・札幌の編集者・ライター栗原です。紙やwebなど様々な媒体で取材・撮影・記事を制作しています。栗原のプロフィール facebook  twitter  mail  札幌良い住宅jp

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