繁盛する「道の駅」。道の駅なかさつない、道の駅萩シーマートから学ぶ

      2016/05/13

道の駅は平成27年現在、全国で1059カ所あります。当初から鉄道の駅のように休憩機能のほか、道路や地域の情報を伝える情報発信機能、そして地域づくりの拠点としての「地域連携機能」が基本的な役割です。さらに、最近では道の駅に防災、地域交通の拠点、6次産業化の拠点、観光の拠点などいろいろな役割を求められるようにもなっています。

その一方で厳しい現実もあります。地元客も観光客も寄りつかない、美味しいモノも面白いものも無い、稼ぐどころか自治体のお荷物になったり、公共的役割もあまり果たしていない道の駅も少なからずあるからです。

こんな道の駅はイヤだ

多くの道の駅が、トイレがすごく綺麗。ドリンクや軽食が購入できて、駐車場も広くて停めやすいという素晴らしい良さを持っています。旅行者がとりあえず次の町で目指す拠点は道の駅、ということも少なくないでしょう。

一方で利用者目線では、残念な点も多々あるかと思います。例えば、地場の産品やお土産、地元のものを使った食事などが少ない道の駅。シーズンオフに品揃えや店の活気があからさまに衰える道の駅。地域の魅力を伝えよう、売り込もうという意欲が店にもスタッフにもない道の駅。

●公共的役割と商売の両立がうまくいかない

公設民営というスタイルなので、自治体は、地域の良さを打ち出したいとマチの象徴的モニュメントや皆に喜ばれる遊具を設置したくなります。多大なコストがかかります。住民の声を盛り込みたくなるでしょう。八方美人的な計画になりがちです。

一方、運営を担う指定管理者側の企業などは、その施設建設のコストは払う必要がありません。なんなら赤字になっても、管理費をいただいて運営できるケースもあります。民間のスーパー等では競合に勝てず売上げや収益が足りなけれれば閉店してしまう局面がすぐ訪れるため、あの手この手で販売戦略を練るでしょう。価格か品揃えか接客か宣伝か。。。その生々しい危機感と勝負に掛ける思いが、道の駅には不足しがちではないでしょうか。

公共的な役割を担うこととの重要性と、事業採算性はどちらも両立しなければならない以上、道の駅の方がそこらのスーパーよりむしろ大変なミッションを進めているという危機感が必要です。地元住民や各業界の思惑や批判も受け止め、公共的な役割も担いながら稼がないとならない。よほど大変な舵取りが求められているでしょう。

●「道の駅なかさつない」の凄さ 美味しそうなものが揃う期待!

平成4年にオープンした「道の駅なかさつない」。当初は年間6~8万人の入り込みでした。国道沿いにありましたが多くの観光客は素通り、あるいはトイレ休憩だけに利用していたのです。転機となったのは平成17年の大規模リニューアルです。もともと枝豆やちーず、卵など素晴らしい農産物がある中札内村の農業者約30人が直売所を開始。地元の飲食店もカレーライスやジェラード、豚丼などの売店を開始したのです。翌年の入り込み者数は42万人。26年度は75万人にも伸びました。

一番の要因は近隣の中核都市、帯広から車で30分ほどかけて、道の駅の直売所に美味しい野菜を買いに来る、買ったついでに軽食を食べて、またドライブがてら帯広に帰るというお客さんが急増したこと。また十勝観光で周遊する観光客も、中札内の美術館などを巡る中でこの道の駅で休憩するのを楽しみにするようになったのが要因です。国道を通ると駐車場にはいっぱい車が止まっていますし、何より屋外のベンチなどでソフトクリームやカレーライスを食べている人が走行中の車からも見えるのです。楽しい、美味しいモノを求めて観光している人によってはスルーできない、何やら楽しそうな予感がするわけです。
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●道の駅萩シーマートの凄さ 魚のうまさが持つ吸引力

明治維新胎動の地、山口県萩市は歴史を目玉とする観光地として知られています。そんな地ですから、食で観光振興、を目指そうという中澤さかなさんの思いがなかなか地元には理解されなかったといいます。また地元の水産業も、水揚げの魚種は多いものの、ロットが小さいのが悩みでした。中澤さんは全国の水産直売所を調べたところ観光客をターゲットにするあまり、平日やオフシーズンの売上げが低いことに着目。萩ならではの地魚をいつでも買える、昔ながらの公設市場のような道の駅を目指しました。
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道の駅萩シーマートには、年間140万人も訪れています。私も道の駅に入って驚きました。店内はやや薄暗く、水槽などが並び、威勢のいい店員さんのかけ声とたくさんのお客さん。どちらを向いてもいろんな魚、水産加工品の総菜やら何やらがいっぱい並んでいます。高級魚を売る店、家で食べやすいミニパックを売る店、総菜の店、など同じ水産ものでも、顧客ニーズに応じて複数の店が商品構成を分けて展開しているのです。

また飲食店も良くて、メニューに地魚を使った料理がびっしり。ここでしか食べられないという興奮で、お客さんたちもついつい高いものを注文しています。ああ、どこぞの水産のマチを訪れ、寿司屋に入っても、地元の魚が一切無かったのを逆に思い出しました。

地元の生産者、消費者が、地元の産品の魅力に気づいていない。その問題を徹底的に解決してきた中澤さかなさん。地元では「金太郎」の愛称で呼ばれる「ひめじ」を全国区の魚に成長させるなど、道の駅の売上げアップと同時に地元水産業の活性化にもつなげています。「道の駅は地域振興の最前線です」という中澤さんの話に正直痺れました。ご本人の著書もあります。

●まとめ

道の駅はトイレ休憩などでたくさんの利用客が訪れます。最近では車中泊ユーザーも増えています。衛生面、安全面等で公共施設と同等の信頼を勝ち得ています。しかも自治体が施設建設をやってくれる。ある意味では恵まれている商売環境ですが、それだけに思い通りに全力で商売に没頭できないような何かがあります。

トイレ休憩のあと車に戻ろうとする人を良い匂いで寄り道させて、地元のイモもち?じゃこ天?ソフトクリーム?何でもいいですから美味しく食べさせて、その隙に、ちょっと気さくな接客でも交えて、お土産を交わせたり、近所の観光体験施設に寄らせたり、いろいろできる可能性があります。

でもその一方で、働いている人たちは、マチを代表して働いているという気概も、地域の特産品に対する商品知識も熱意もない場合があります。道の駅はそのどっちにも転びうる、なかなか難しい拠点ではないかと思う次第です。





栗原
北海道・札幌の編集者・ライター栗原です。紙やwebなど様々な媒体で取材・撮影・記事を制作しています。栗原のプロフィール facebook  twitter  mail  札幌良い住宅jp iezoom(いえズーム)

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