食育はなぜ必要か?~一次二次産業が食卓から乖離する現代

      2016/11/23

●食育が必要なかった時代

私が住む札幌市も数十年前は、食育なんてものは必要がありませんでした。

例えば、毎年秋になると、札幌の隣りまち石狩町(現在は石狩市)の農家さんが札幌大球という大きなキャベツを生産し、
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同じく石狩の漁業者がニシンを漁獲し、身欠き鰊を作っていました。この札幌大球とニシン漬けを食材にして

札幌(北区新琴似あたり)の漬物加工業者がニシン漬けを作るわけです。

そして地元の商店で鰊漬けは販売され、冬の間、美味しい漬物を札幌市民は味わうことができました。

もちろん鰊漬けを家庭で作る石狩町民や札幌市民もいました。

こうした時代には、

1 食材となる農水産物をつくる人たちの存在

2 そうした食材を加工して漬物など加工食品にする人

3 地場の食材、加工食品を少しでも高く、上手に売り切る商店主

の姿が地域の至る所にあって、そうした1次産業2次産業3次産業が地元で完結していました。そういう時代には、子どもも大人も、だれが食材を作り、加工食品を作り、だれが売っているのか、その様子が身近に感じられました。その結果、子どもたちは「仕事」とは何なのかが何となく理解でき、農業や漁業と食卓とのつながりを実感として理解できたでしょう。生産者の側も、自分たちが丹精込めて作ったものが消費者に届いてどんな反応だったか、ある程度わかるわけです。こうした時代には、食育などという言葉は無かった、いや必要なかったのです。

●今は食育が必要!
ところが現代は、50年前に比べ農業者が4分の1にまで減りました。

農業者や漁業者が生み出した農水産物は、流通を経由して全国に発送されます。消費者は、地元の商店ではなく、全国チェーンのスーパーから食材を買って料理をします。地元の食材を巧みに、余さず、少しでも高く売る商店主の出番はほとんどありません。全国の農産物が消費者に届くようになった一方で、地元の消費者が食べる機会は俄然減りました。子どもたちにとって、親がどんな仕事をしているのか、自分が食べている食材がどこで作られているのかを日常生活で見聞きする機会も減りました。

つまり、食と農が乖離し、生産者のことがわからない、地場食材のことも、旬のことも、調理法もわからなくなり、次第に、食の大切さも、働くことって何なのかもわからなくなってきます。また、身近に農が無くなり、土に触れることも、食材を作る体験も無くなってきました。

もはや、現代社会は食の大切さや仕事とはなんなのか、地場食材の魅力や旬を、消費者の反響を生産者にフィードバックする方法も失ってしまったので、それを取り戻すために、食育をわざわざやらなければならないようになってしまったのではないでしょうか。

そうしたことを私は、全国各地での食育取材で感じました。

「食育」のお手本小浜市。給食の「地産地消」に挑戦する東神楽町。
小浜キッズ①
この事例だけではありません。魚沼市でも、北杜市でも愛南町でも・・・いろいろ学びました。

取材活動を通じて、第3者的に食育を実践している方々の取組を見て私は居ても経ってもいられなくなりました。

●るるる♪キッチンガーデンくらぶの立ち上げ

特に小浜市の義務食育、キッズキッチンは私にとって衝撃でした。最近、世間を賑わす育児放棄、児童虐待では、必ずといっていいほど、家族の団らんが崩壊しています。団らんどころか、まともな食事を食べさせて貰えない状況で餓えてしまう子どもすらいます。家庭内の食卓、食事がいったいどうなっているかは家族しか知らないのです。そんな中で小浜市は、市内の4~6歳児を市役所が全員集めて、1汁2菜を子ども達自身が作る料理教室を行うのです。そう、そこが肝心なところです。食育の大切さを理解しているお母さんの子どもに食育のイベントで徹底して教えることよりも、子どもの食にほとんど興味がない。そんなお母さんとその子どもにこそ、食育は必要です。そういう子こそ救わなければならないのです。小浜市は市役所がそれをやっているのが素晴らしいのです。

とはいえ、取材を終えて帰ってきた私が住むのは札幌市であって小浜市ではありません。義務食育は札幌市にはないのです。

そんな中、キーマンとなる人に出会いました。石狩のクッキング講師、みーやんです。彼女は食のイベント司会や料理教室の先生などをしつつ、農家さんの協力を得てビニールハウスなどで既に畑で料理教室などをやっていました。
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●目指すは敷居の低さ

義務食育をするには、市役所や幼稚園、小学校などが一致団結して動かなければできません。私の力ではどうにもならない。では次善の策としては何か方法はないか。そう考えて出てきたのが、「敷居の低さ」です。今週末は家族でイオンに遊びに行こうかな、なんかほかに面白いことないかな?とか考えているごく一般的なファミリーに、どうにかして、農業体験や料理教室が気軽に、親子で体験できる場があったら良いと私は思ったのです。

実は私は根が真面目くさった性格なので、最初に思いついたのは、米づくりなら、種から苗づくりをして、田植えをして、雑草取りをしてあれもこれもして収穫してはさがけして脱穀してといった一年がかりの農業体験の連続講座を考えました。一年通えばお米の一生、農業者の一年を学べるというような・・・。

でもそれでは、食と農に超意識の高いお母様たちや、新規就農希望者くらいしか参加してくれないでしょう。そうではなく今まで一度も、農業体験をしたことがない、家族で料理なんてしたこともない、そんな方でも気軽に、一回でもいいから楽しく参加できる市民活動を立ち上げたかったのです。

みーやんは、参加者に楽しく、農業体験や料理教室を体験させるテクニックを持っています。一方私は、イベントの集客に必要なチラシ制作や、イベントを行った後のイベントレポートなどを文字、写真、動画、などにして、WEBで発信する編集力があります。そこでみーやんに相談して、まず石狩市さんに協力をお願いしました。石狩市さんは農業体験を受け入れてくれる農業者さんや、調理室やバスの手配、さらには市内全域に配布される回覧板に、るるるのチラシを入れてくれる段取りまでしてくれました。

そうして第1回は、みーやんの知り合いの農家さんで田植えをすることになり、私は企業スポンサーまわりや、チラシづくり、石狩市さんとの段取り、みーやんは当日の運営の準備、そして他にも運営メンバーとして10人近い仲間集めも行って、るるる♪キッチンガーデンくらぶの実行委員会ができました。

そこから先は、稲刈りや牧場体験、イモ掘り、魚料理、お好み焼きづくり、卵磨き、ナガイモほり、厚田の体験バスツアーなどなど、約4年で20回のイベント開催。延べ人数で約1000人もの方々に参加していただきました。
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目指していた敷居の低さは、イベントを開催する度に記事と動画で内容を分かりやすくネット公開することや、午前中の農業体験のあとに料理教室を行うという農と食のつながりのわかりやすさ、大人でも子どもでも楽しめるメニュー、企業スポンサーのご支援をいただくことで、参加しやすい価格設定など、さまざまな工夫で実現することができました。子育て世代は何かと忙しいのです。年に何回も行うイベントに皆勤賞っていうのはかなり難しいことです。子どもが風邪を引くこともありますし。

そこでるるるは会員制ではなく、毎回チラシを作り、毎回ネットで参加者を募集します。その結果、毎回顔ぶれがことなるのです。食育に詳しい、意識高い系のお母様方、固定メンバーだけで共感しあい頷きあう団体にはしたくありませんでした。そうして今でも初めて参加してくれる方々に囲まれてイベントを運営できています。

参考までに総集編動画もあります。

サイトはこちらです。過去の取組は詳しく紹介しています。
http://rkgc.jp/

不定期開催ですのでイベント参加者募集の際には、メール登録していただいている方にはメール告知もさせていただいております。もしよければ登録お願いします。また、こうした地域での食育活動に、賛同していただける企業の方に活動の支援とスポンサーもぜひお願いしたいと思っております。また、他の市民団体や生産者の方とのコラボも望んでおります。多くの方と協力し合って地域の食と農を学び、楽しみ、暮らしに活かしていきたいと思っておりますのでご支援よろしくお願いします。

栗原
北海道・札幌の編集者・ライター栗原です。紙やwebなど様々な媒体で取材・撮影・記事を制作しています。栗原のプロフィール facebook  twitter  mail  札幌良い住宅jp

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