「スポーツ離れ」の打開策と「スポーツによる地域振興策」まとめ。

      2017/08/10

「スポーツ離れ」の実態(子どもから大人まで)を探るべく、
そしてスポーツを核とする地域振興は可能なのか、
を知りたいと思い全国各地に取材をしてきました。
その話をさせていただく前に、一つ考えて欲しい点があります。

●スポーツ離れ、体力低下はゲームのせい?
「子どもが外で遊ばない」「運動しなくなった」という声を聞きますが、複数の原因があると思います。 ゲーム は要因の一つ。学校から帰ってきてまっしぐらにゲーム。あるいは友人と一緒にゲームをしていれば、外で遊ぶより楽しい的なことはあると思いますし私もそうでした。でもそれだけではないと思います。

●スポーツ離れは家族や社会のせい?
まず、田舎では小中学校の統廃合が進み、 スクールバス 利用が増えます。結果、通学という「運動」習慣が失われます。少子化・過疎化で兄弟やお友達も減ります。逆に都会は、公園などで子どもを遊ばせようにも不審者が心配な時代です。また、親も 核家族化や共働き で、子どもの面倒を見る時間がない親、そして祖父母も子どもと同居していない。学校の先生も事務負担などが増え、 部活動 を担当することが難しく、また地域のお父さんたちもスポーツ少年団などの指導をする時間的余裕が減っている。そして 塾や習い事 をびっしり入れる傾向が強まっているという社会的背景もあります。

●スポーツ離れは子どもだけか?
マラソンやウォーキング、シニア世代のパークゴルフブームなどもあって、何となく運動する人が増えているように思えるかもしれませんが実際は違います。まず働き盛りの20代~60歳あたりまでの人が仕事や子育てが忙しいのをいいことに運動をしなくなっています。高校までは運動嫌いな人でも体育で強制的に運動をする機会があるのに、社会人になった途端、運動しない人は全くしなくなるのです。子育てや仕事を卒業するシニア世代になってやっとウォーキングする人が増えるだけで、大事な 20代~50代にさっぱり運動しない のは健康面で大問題です。家事や労働の中身を見ても、機械化が進み、運動量は低下してしまいます。我が子の運動にも関心が減ってしまう点も含めて。こうした前提を踏まえつつ、事例をいくつかご紹介します。
  1つめは、冬季スポーツ、そして地域スポーツの一つ「スケート」を復活させた北海道の別海町。   2つめは、全国にいる草野球愛好者たちの聖地として発展した徳島県阿南市。   3つめは、総合型地域スポーツクラブが町内会や役場、市教委、福祉施設などと連携し住民スポーツを活性化した北海道北広島市。 

の事例です。

事例その1 地域のウインタースポーツが盛んになり、衰退し、再び盛り上がった理由

昭和30年代から北海道の東にある別海町ではスケートが盛んでした。先生や親御さんが学校のグラウンドに土手を作って雪を踏み固め夜9時~深夜まで1週間連続で水まきをしてリンクを作り、子ども達は学校の休み時間や放課後、そして体育は当然、スケートをするという地域です。

親御さんは寒い中、子どもたちのためにリンクを作りスケートを買い与えます。町民スケート大会も開かれ、学校対抗リレーでは、学校の名誉も背負った子ども達がハイレベルな闘いを見せ、漁師のお母さんはサケやコマイ、農家のお母さんは野菜などを持ち寄り温かい料理でねぎらう、町最大のイベントです。別海町は昭和60年代から平成の初期にオリンピック選手を含む全国区のスケート選手を多数輩出する地域として知られるようになりました。
町民スケート大会開会式2

●ウインタースポーツ衰退の波
そもそも北海道では冬は地域によって違いますがスケートかスキーをするのが定番です。積雪寒冷地ですから。体育館だって寒いわけですし、地域の気候に合わせたスポーツをする方が良いでしょう。ところが、今、全道的に冬の体育でスキーやスケートが減ってきています。親がスキーやスケートをしなくなっている。だから子どもにもさせようとしない。子どもが小学校入学時にスキーセットやスキーウェアを持っていないので体育の際にわざわざ買わないとならないという話になり、スキー不要論が親御さんから出てくるそうなんです。

●スケートとサッカーの「2刀流」が難しい理由
別海町も、北海道の他の市町村と同じくスケートをしない子どもが増えた時期があります。まず部活のあり方に要因があります。スケートが大好きな子どもも、夏はスケートができませんからサッカーや野球などをしたりします。そこでサッカーや野球の部活や少年団に入るわけです。夏はサッカー、冬はスケートという2刀流でどちらも選手を目指せるならとても良いのです。子どもの才能がどちらの種目で開花するかわかりませんし、心身の成長のためにはむしろ複数種目をやっていた方がいいのです。サッカーで華麗なドリブルを見せる子どもが逆上がりなどは全然できないというような、偏った身体能力になってしまう話を聞いたことがあるかと思います。
町民スケート大会
ところが、サッカーや野球の少年団の先生から見ると、冬場に参加せず、スケートをする「2足のわらじ」的な子より、通年で通ってくる子の方を、実力に大差がなければレギュラーにしたくなるわけです・・・。こうして単一スポーツに絞り込む子どもが増えるわけです。その結果、どちらかというとマイナーなウインタースポーツの方を諦める子が出てきます。

●他にも要因が
別海の子どもたちのスケート離れは他にも要因がありました。リンク作りが機械で簡略化されたことで、親御さんの負担が減り、それが逆にスケートへの関心を薄めた点があります。親が子どものスケートに興味を持たなくなると、少年団への送り迎えとかも面倒に感じるようになるわけです。スラップスケートの導入で道具の購入費が高くなったこともあります。また、オリンピック選手を輩出する状況に町が沸き立ち、一部の優秀な選手を育成する指導に重きが置かれ、スケートが苦手な子への指導が弱まった点もあります。

●スケート人気が復活!
こうした状況に危機感を強めた町は、オリンピック選手の楠瀬志保さんを指導員として招聘。ごくごく基礎的なスケートを学ぶ教室を平成11年から始めました。児童はもちろん幼児、そして高齢者までオリンピック選手に教えて貰えるようになり、全力疾走するよりもっともっと早いスピードで風を切って滑る楽しさを知るとスケートが大好きになる子が増え競技人口の裾野が拡大したのです。今では再び全国レベルの選手が続々と誕生するようになりましたがあくまで原点である「滑る楽しさ」を皆に教える指導が行われています。

年末になると別海出身のスケート選手が全国から続々と町に帰ってきて、全道大会前の中学生を指導するんだそうです。憧れの先輩たちの指導を受けてますます強くなっていく別海の子どもたち。ウインタースポーツの競技人口がどんどん減る中で、別海町は異彩を放っています。子どもたちが楽しく地域特有のスポーツを楽しむためには、親、学校、自治体などの長期的視点での関わりが欠かせないのです。

事例その2 シニア世代の草野球ファンを喜ばせる草野球の聖地 徳島県阿南市

全国には3万を超える草野球チームがあると言われます。王、長嶋時代だったら、毎日巨人戦をテレビ観戦した人たちがたくさんいたでしょうし、阪神、ダイエー、日ハムなど野球ファンは今でもますますたくさんの野球ファンがいます。その中には観戦するだけじゃなく、野球を自らプレーしたいと思う人だって当然たくさんいるわけです。

彼らは地域にある野球場を借り、道具をそろえ、朝野球などで練習をし、中には地域の大会に参加したりして日々楽しんでいるわけです。

そこに注目したのが徳島県阿南市です。阿南市は野球のまち推進課を市役所に創設。全国の草野球チームからの申し込みの電話を受け付け、1泊2日の「野球観光ツアー」をプロデュースしてくれるのです。

阿南市を訪れる野球チームは年間1万人以上。最初に「JAアグリあなんスタジアム」に案内されます。天然芝で両翼100㍍。プロ野球の公式戦も開催できる球場です。電光掲示板に、チームメイトの名前や打順が表示され、ウグイス嬢が選手名をアナウンスします。地元の審判員が手配されており、対戦相手も事前のヒアリングである程度実力を見定め、接戦になりやすい相手をマッチングしてくれているのです。
驚くことに観客席には阿南市民の有志で結成されたチアリーディングチームも声援を送ってくれます。見事な演出。まるでプロ野球選手になったような気持ちで、選手一同大興奮です!阿南市には球場があり、90近い草野球チームがあり、地区対抗戦も開催され、役場も草野球による地域振興を本気になって取り組んでいるから、草野球観光ツアーの参加者にこんなおもてなしを提供できるのです。

夜の懇親会では、徳島伝統の阿波踊りの指南までしてくれます。全国から草野球の聖地阿南まで、野球チームのみんなと、時にはその家族も一緒にやってきた人たちは、大好きな野球で、仲の良いチームメイトと一緒に、素晴らしい環境で熱戦を繰り広げ、そのあと地域の伝統を体験し、一緒に美味しいものを食べ、旨い酒を飲み、観光もして・・・・そりゃ楽しいに決まってますよね。

観光資源の少ない阿南市は、飲食店や宿泊施設が衰退していました。今時、出張のサラリーマンだって、出張費も厳しく、夜の繁華街に繰り出す人は少ない時代です。何とかしようと、野球好きな市職員が声を上げ、草野球で観光振興をすることになったのです。思った通り、草野球を楽しみにチーム&家族で来た人たちは、スポーツで流した心地よい汗と、適度な疲労で食事もお酒も思わずすすむわけです。当然宿泊もします。飲食・宿泊業にとって、素晴らしい実需を生み出したわけです。

今では草野球の聖地と言われ、日本全国から、いや国外からも草野球チームが訪れる阿南市。草野球なんでどこでもできるじゃないか?なんで阿南が草野球でまちおこしなんてできるんだ?なんて声だって当然あったわけです。そういう声を突破した市職員の熱意、地元の草野球選手やチアリーディングの皆さん、審判の方々などいろんな人が一致団結して、他のまちにないスポーツによる観光振興を成し遂げたわけです。他の市町村ではマラソン大会をやったりするケースが多いですよね。成功例が多いですし。そんな中で阿南市は独自色がすごく強いのでご紹介させていただきました。

事例その3 市民のスポーツ参加を幅広く促す総合型地域スポーツ倶楽部のありかた

きっかけは社会人ラグビーの愛好者が地域にいて、町内会やPTAに、初心者向けのタグラグビーの魅力を紹介したことでした。町内会の理解を得て会館の一角を借り、小学校では少年団チームもでき、そのお母さんたちもチームを結成。その活動の中で、住民たちももっとスポーツを楽しみたいのだと知り、地域住民から役員を募り、スポーツ教室やイベント開催などを始めました。

総合型地域スポーツ倶楽部(よりづか★ちょいスポ倶楽部)を設立し、市に学校開放を依頼し、近隣の小中学校で体育館の夜間利用のokをもらい、地域にチラシを配り、子どもたちの参加者を増やすだけじゃなく、シニア向けに健康体操、骨盤体操、ノルディックウォーキングも主催・・・。今では700人を超える会員がスポーツを楽しんでいます。人気の秘訣は運動嫌いな人でも楽しめるニュースポーツの導入に積極的なこと。スポーツが苦手な子は、体育でも、倶楽部活動でも、なかなか楽しめない中で、ここ(よりづか★ちょいスポ倶楽部)では、楽しめるのです。ニュースポーツは誰もが経験がないので力量差が最初は少ないからです。この倶楽部は、自治体、町内会、地元の住民、高齢者施設にもどんどん相談に行き、いろんな人を巻き込んで活動を拡大しています。その熱意と巻き込む力、が地域のスポーツ熱を高めているのです。

他にも紹介したい事例があったのですが、もう4800字も書いてしまいました。またの機会にさせていただきますm(_ _)m

栗原
北海道・札幌の編集者・ライター栗原です。紙やwebなど様々な媒体で取材・撮影・記事を制作しています。栗原のプロフィール facebook  twitter  mail  札幌良い住宅jp

 - 子育て, 地域課題